更新日 2008年4月17日 (木) 16:26
 
 

世界中の多くの人を魅了する場所、カリフォルニア。人工は全米で第1位、日本の1.5倍の面積、州知事はアーノルド・シュワルツネッガー、世界でも稀な年間250日以上が快晴の地中海性気候、そこにいるだけで幸せを感じることが出来る。この映画は、1957年から現在に至るまでのカリフォルニアのサーフカルチャーやその土地の歴史を追い、ユニークなカリフォルニアでのサーフィンライフを映し出す。この土地とそこに生きる人々が持つ美しさとエネルギー、生命と自然のリズム、不思議な力を感じることのできる、人生のサイクルについて描いた映画である。6月21日、渋谷シネクイントにてレイトロードショー決定!

 
 ようやく日本で公開される〈ONE CALIFORNIA DAY〉。〈SINGLE FIN : YELLOW〉でジェイソン・バッファの手腕に魅せられたサーファーには朗報である。2006年にはアメリカでプレミアが行われていたとはいえ、今回はもちろん日本語に翻訳されてのロードショー。映像と言葉のシンクロによって、バッファの世界観への理解はいっそうの加速を見せるはずである。

 本作はキーパーソンを通じて、カリフォルニアに点在するサーフスポットへフォーカスし、総じてカリフォルニアのムードを描き出そうと試みた作品である。トップバッターはジョエル・チューダー。彼を通じてラ・ホヤの光景が映し出される。おそらくこのフッテージの冒頭、ジョエルが波に乗る瞬間を水中から切り撮ったシーンこそが今作のすべてを表現していると言えよう。眩しい陽光の下、ひんやりと冷たい海水に心地よさを覚えながら波のエネルギーを全身で感じ、次の瞬間には滑り出していく。まさにカリフォルニアらしい1シーン。カリフォルニアを訪れたことのあるサーファーならば、その“らしさ”に圧倒的なリアルを覚えるはずだ。

しかし〈ONE CALIFORNIA DAY〉が描き出そうとする世界観は、“らしさ”の描写だけにはとどまらない。このシーンにはサーフがもたらす恵み(=ストーク)というグローバル的側面と、ラ・ホヤの日常というリージョナル的側面とが描かれている。サーフによるストークは全世界的な感覚だが、ラ・ホヤの日常は絶対的ではなく世界におけるひとつのパートにすぎない。とはいえそれはポジティブさを持った視点であり、多彩さや他者との違いをバッファは礼賛する。隣の人とキミとはまったく違う。もっと想像力を持って世界に触れようとメッセージを発するのである。

 また驚くのは、こうしたメッセージを持って世の中に登場したタイミングである。2006年にプレミア上映が行われたのだから、その2〜3年前には制作へのアイデアが生まれていたに違いない。同時期の世の中を見れば、2003年はイラク戦争がはじまった年であり、日本にいたってはまだまだITバブルのまっただ中。メディアも世間もすべてが六本木ヒルズをアイコンに極端なベクトルを持って動いていた時期である。そんなタイミングで日常的視点の作品をつくろうと画策した人がいて、賛同のうえ協力した人がいた。さすが歴史あるカリフォルニアのサーフィン。その懐はたかだか50年超しか歴史のない日本人には想像できない深さである。ちなみに2005年上映の〈クラッシュ〉と〈シリアナ〉、2006年の〈バベル〉など、ハリウッドのそうそうたる社会派映画と歩幅が同じであるように、単純に海へと引きこもった作品ではなく、十分に社会的なメッセージを持った内容になっていることも注目すべきポイントである。

 しかし今作品はノン・フィクションではない。あくまでパッケージにされた物語であり、フィクションである。この点において製作陣も織り込み済みなのはタイトルを見れば一目瞭然だ。ONE CALIFORNIA DAYとは「ある、カリフォルニアの一日」であり「カリフォルニアの、ある一日」ではない。意訳するなら「カリフォルニアって、こんな感じ」というべきもの。リアルなカリフォルニアを本当に知りたいのならば、自分の身体で感じに行くしかない。〈ONE CALIFORNIA DAY〉は観る者にそう訴えかけるのである。  (テキスト:小山内隆)
▲印象的なジョエルのシーン
▲らしさの圧倒的なリアル
http://california-movie.jp/
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