「日本のサーフィン、その不都合な真実」

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「日本のサーフィン、その不都合な真実」

Photo / S.Yamamoto
Text / S.Yamamoto

A.S.P / Billabong World Junior Championship fueled by Monster Energy

DATE :2010.01/9~17
PLACE:North Narrabeen,NSW,Australia


今年もジュニアの世界一を決める大会がオーストラリアのノース・ナラビーンで開催された。結果詳細はコンテストページを見てもらうとして、ここでは日本の現在の実力と置かれている状況を話したい。


 日本チームは松岡慧斗、加藤嵐、大橋海人、仲村拓久未、新井洋人に橋本小百合、大村奈央の七人。実績申し分ない最強メンバーが、この世界大会に挑戦した。しかし、結果は過去と同じラウンド3まで。先輩たちを大きく越えることはできなかった。日本人選手は見ている限り、ライディングにメリハリが無く「flow」ができていない。これでは良くて5点止まり。それにパワーとスピードが足りなかったと感じた。そして、いつもの通りメンタルの弱さ。典型的な日本人選手とでも言おうか・・・。

「何でうまいのに勝てないんだろう? 」


 今大会はあまり波が良くなかった。南から北にウネリが変わることで大きくコンディションも変わった。日本人選手はこの難しい状況を練習し、理解していたのか、と聞かれれば、していないと言うしかない。ただ難しいということだけは、わかっていたと思う。試合では、それをどう乗り越えるか? という作戦も無く、ぶっつけ本番となった。でも、それなりに日本でやってきたプライドがそうさせたのか、自信はあったはずだ。でも、それは幻想だったと試合が終わり、みんな現実を知ることとなる。

 大会終了後に日本人選手たちに話を聞いた。試合に対し「特にヒートに作戦はない」と答える。「自分のサーフィンをするだけ」と言う。これは潔い答え。でも、この答えは、どう戦っていいかわからないということだ。これで世界を相手に勝てるのか? 実際、マンオンマンが初めての選手が新井と仲村の二人もいた。それまで一度も経験が無いまま、この世界大会に臨んだのだ。

 日本はNSAでもASPでも4人ヒートとなっている。WQSでグレードが高ければ、二人で戦うことになるが、ジュニアでそこまで行くのは無理なのが現状。JPSAではマンオンマンを取り入れているが、この試合に出るためにはプロ公認を持っていないとエントリーすらできない。だから実戦で経験することは、今のジュニアは皆無と言っていい。ジュニアだけでない、多くの若手日本人プロがこれを経験せずに世界へ挑戦しているのが、今の日本のコンペティションの現実だ。

 世界各国は専任コーチが付きっきりで指導。作戦をその場その場で与え、選手はそれに応える。さらに、そのコーチが、経験豊富な元WCT選手だから敵わない。片や日本人の子供達は数少ないキャリアと体験だけを手探りに、一人で世界へ挑む。大人に言われる言葉は「頑張れ!」の一言だけ。

「いったい、どう頑張ればいいんだ? 」


現地での子供達は良くも悪くも団体行動だった。滞在中の行動を見て、「修学旅行じゃないんだから・・・。」という声も聞かれた。英語が喋れないから仕様が無いこともあるけれど、日本人同士で連みすぎとも言われた。でも、日本人は和を尊ぶ人種。仲間外れを嫌い、相手に合わせる国民性だから、これはある程度仕方ないことだと思っていた。

 でも、連む理由がわかった。子供たちの状況を考えて欲しい。いきなり世界の檜舞台に投げ込まれ、結果は自己責任となれば、どうなるだろうか? 大人は教えてくれない。なので、子供たちは、自分たちで考えてできる限りのことをやるしかない。そう、不安。わからないことだらけだから、子供同士で連んで答えを探す。経験が無いんだから、連むしかないのである。行動が甘くなるのも当然かもしれない。これで子供達を責められるのか? 子供達だけの責任にしていいのだろうか?

 日本のサーフィンは最初から自己責任の世界。それを子供にも強いている。問題なのは何も教えていないのに、強いていることである。それでは世界に通用する選手は育たない。だって個人でいきなり、世界を相手にしないといけないわけだから、最初から敵う訳がない。結果、ジュニアの時に学んだことは、大人は頼りにならないから、自分でやって行くということだけ。そして、何も教わらずに育った日本人プロサーファーは、その後、自分一人で世界を廻り、一人で考え、身銭切って、身体ボロボロにして、そして、一人でキャリアを終わって行く。悲しいかな、これが子供達の未来だ。

日本には選手を育てるシステムが無い。個人の努力に頼るだけ。これが日本のサーフィンの、そして、コンペティションの不都合な真実。

子供に目的意識を植え付け、自立させることは必要だ。しかし、自主性を持たせるためにだけ、ほうり出すことは、はっきり言って、これは大人の責任放棄だ。教育、指導することと手伝うことは違う。でも、手伝うことが=(イコール)甘やかすことにはならない。大人がその違いを混同して議論している。まず大人がそのことを理解することが必要で、そして、国全体で人材育成のシステムを構築すること。これが先だ。それができなければ日本のサーフィンの未来は無いと思う。

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photo:S.Yamamoto
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