Cyrus Sutton サイラス・サットン、インタビュー

surfmedia0901.png

サーフメディアは世界のサーフィンニュースを日本語でお届けするサーフィン情報サイトです。


 自由の意味を求めて男ふたりが旅をする、というストーリーはどうやらアメリカ文化に根付いた古典的なスタイルらしい。古くはアメリカ文学の名作「ハックルベリー・フィンの冒険」がそうだ。さらにはアメリカン・ニューシネマの代表作「真夜中のカウボーイ」、「イージーライダー」なども同様のスタイルを踏襲しているといえる。「イージーライダー」の劇中、アル中の弁護士役のジャック・ニコルソンは主人公のふたりにこんなセリフを呟く。「アメリカ人は個人の自由についてはいくらでも語るけど、実際に自由な個人を見るのは嫌なんだよ」。言い得て妙だ。
 そういえばサーファーという人種にも真に自由な人間が多いようだ。もしアメリカの古典になぞらえて、ふたりのサーファーが自由の意味を求めて旅をしたら…。カリフォルニアの映像クリエーター、サイラス・サットンの最新フィルム『Stoked&Broke』は、まさにそんなロードムービーだ。
 1月に日本でもDVD(日本版)がリリースされる最新作『Stoked&Broke』について、さらには彼が主宰する“Korduroy TV”について、サイラス自身が表現したいメッセージやヴィジョンを聞いてみた。



Special Thanks/Laid Back Corporation, Cinema Amigo Text &Photo : :Takashi Tomita

今作品を作ろうとしたきっかけ

今作品を作ろうとしたきっかけは? 

8.jpgcoutesey of Laid Back Corporation

まず今作品『Stoked&Broke』を作ろうとしたきっかけは何だったのでしょう?

ここ10年ほど、僕はプロサーファーを追いかけて世界中を旅してきた。最近は遠いところへ旅しないと楽しめないと誰もが思いがちだよね。だから、その逆のものを作りたかった。莫大な費用をかけずに、遠くにトリップしなくても楽しい時間を過ごすことができることを見せようと思ったんだ。

もともとは私のウェブサイト“Korduroy TV”の中でのシリーズ企画にするつもりだったんだ。でもラホヤでヴァンに住んでいるニーボーダーのスティーブ・ファーガソンと出会い考えが変わった。自由な人生がどんなに素晴らしいものかという話を期待していたら、逆に彼は自由だけを追い求める人生に対する訓話をしてくれた。自分の自由に責任を持つように、と。これがこの作品の発想の原点。そして、ウェブ用の短い映像ではなくてドキュメンタリー作品を作るべきだと考えた。

オーストラリアを舞台とした前作の『Under the Sun』は、入念に撮影計画をたてて制作に3年を要した。でも今回はドキュメンタリー作品として、流れを自然に任せることにしたんだ。お陰で、物事を自然に任せることの美学のようなものを今回学ぶことできたよ。



『Stoked&Broke』の意味

『Stoked&Broke』とはどういう意味ですか?

13.jpgcoutesey of Laid Back Corporation

タイトルの『Stoked&Broke』とはどういう意味ですか?

これはまさに自分たちサーファーを表している言葉。海に入りサーフィンしているとストークはするけど、ストークばかりしているとお金を稼げない。かといってオフィスで仕事ばかりしてるとお金は手にできるけど今度はストレスがたまる。このタイトルは、サーファーとしての人生の葛藤そのものを意味している。サーファーには喜んで金欠になっている人が多いかな。もっとも金持ちである必要はないのだけどね。

7.jpgcoutesey of Laid Back Corporation

今回はサイラス本人と若手サーファーのライアン・バーチのふたりが旅するストーリーですが、どうしてライアンをパートナーに選んだのでしょうか?

ライアン・バーチはここ数年でサーフィンの腕が格段に上がっている若手サーファー。地元カーディフのローカルの誰もが、彼のロングボードのスキルはすでにジョエル・チューダーを超えたと言っているくらいさ。僕も同感だね。彼は世界でベストなロングボーダーだと思うよ。そんなすごいサーファーの友人が僕の家のすぐ近所に住んでいるんだから、彼にフィルムへの参加を尋ねるのはある意味必然だった。どんなボードでも乗りこなすので、作品中ではフォーム材のフィンレスでのサーフィンが際立って印象的だけど、彼は実際ノーズライディングも驚異的なんだ。ハングテンからハングヒール、キックファイブ…。絶対に落ちないで延々とノーズライディングをし続ける。彼はまだ22歳、末恐ろしいよ。このフィルム撮影の旅に関してはすべてが良い方向に進んだんだけど、そのひとつがライアンの参加だったといえる。


途中の人びとの反応は?

途中の人びとの反応はどうでしたか?

19.jpgcoutesey of Laid Back Corporation

このフィルムの中であなたたちふたりは、手製のリヤカーを引いて無一文で野宿しながら旅するわけですけど、途中の人びとの反応はどうでしたか?

ホームレスに間違われることはなかった。僕たちが波を楽しみ笑顔でいる限り、この旅はうまくいっていたよ。廃材や竹から自分たちの手だけで作ったリヤカーも、僕たちのDIY精神を満足させてくれた。ボードも自分たちで作ったものが結構あったしね。一見すると路上生活者に見えるかもしれないけど、僕たちは楽しい波でのサーフィンを満喫していた。だから旅の間ほとんど僕たちは笑っていたんだ。サーファーもサーファーじゃない人も、それを感じてくれたと思う。彼らは僕たちの笑顔を見ることで、僕たちが楽しんで満足していることに気づいたんだ。もし幸せでポジティブなエネルギーに満ちていて、それを発していれば、物事は悪い方向にはいかないものだよ。それこそこの映画の伝えたいことさ。


旅の途中での様々なサーファーと出会い

旅の途中での様々なサーファーと出会い

36.jpgcoutesey of Laid Back Corporation

旅の途中で様々なサーファーと出会いますが、彼ら年配のサーファーたちからどんな影響を受けましたか?

例えばスティーブ・ファーガソンは、「人生においては自由と責任のバランスをとらなければならない」と言っていた。自由だけを追求すると、最後には孤独になり社会から孤立する。責任だけを背負い込むと、自由を得られず自分の人生に不満を抱く。一番大切なのは両方のバランスを見いだすことだと彼は言う。僕もこの考えに共感する。人生とは、情熱を追求することと、社会生活に心を配ることとのバランスの中で成り立つのだと思う。
社会性という意味では、これまでサーファーは常にそれに反してきた。社会に背を向け、波を求め自由な存在でいたいと思っている。でもそれだけではいずれ孤立してしまう。もともとサーファーは海から素晴らしいプレゼントをもらっていると思うんだ。だからこれを社会や人びととシェアすることが大切なんじゃないかな。

『Stoked&Broke』で伝えたいメッセージは?

今作『Stoked&Broke』で伝えたいメッセージとは?

あなたは、DIYやハンドメイド・クラフトの価値を紹介し、物質主義の現代社会を問い直すコンセプトのウェブサイト“Korduroy TV”を主宰していますが、今作『Stoked&Broke』も含めて、あなたが伝えたいメッセージとは?

21.jpgcoutesey of Laid Back Corporation
物質社会は素晴らしいと思う。僕だってスマートフォンやiPadを使っているし、そのお陰で家族や友人と繋がることができ、仕事もしている。ただこれが一生続くとは思っていない。いずれ地球が僕たちを支えられなくなるかもしれない。もしそうなったときのために、僕たちはシンプルに生き、食べ物を育て、コミュニティでお互いを助け合う準備をする必要がある。周りにある資源やモノを大事にすることで、幸せで豊かな生活を得られると思う。そんな意識から“Korduroy TV”を始めたんだ。自分自身が学ぶ必要があると思ったからであって、メッセージを聞いてくれなんておこがましいことは考えてないよ。ただ共感してもらえるならとても嬉しい。

あなたのフィルム作品に通底する理念は?

あなたのフィルム作品に通底する理念は?

あなたのフィルム作品や“Korduroy TV”に通底する理念は、シンプルに生きることの提案なのでしょうか?

39.jpgcoutesey of Laid Back Corporation
食べ物を育てたり、太陽光で発電したり、現代の社会生活に頼らなくても生きていかれる術を学びたいんだ。それこそ本質的なセキュリティー(安全確保)だと思う。金融資産や住宅などではなく、普遍的に価値のあるもの、例えば暮らしの知識とか生きるためのスキル。これらを身につけることこそ本当に大切なんだ。さらにバランスも大切。物質社会に片足を突っ込んでコンピューターで仕事をしつつも、その世界だけに頼らない。サーフィンと社会のバランスと同じ。ひとつのことだけに偏ったり頼ってはいけないと思う。
沖で瞑想して自分の内なる声に耳を傾けてみてほしい。テクノロジーを享受する現代社会を賞賛する声、一方でそれを疑問視する声。その葛藤の中でどうすれば良いかをよく考えてみる。光の中で闇への準備をする。ときに間違うかもしれなけど、試行錯誤をしながら進んでいけばいい。それが創造性というもの。

今後のプロジェクト

最後に今後のプロジェクトや展開について教えてください。

IMG_7798.jpgtomita takashi
“Korduroy TV”は今後もずっと続けていくよ。サイトをリニューアルしてさらに充実したカタチにするんだ。いまはブログっぽいけど、今後はもっとコミュニティとして機能するサイトにしていくつもり。個人的にはここ何年か忙し過ぎたので、いろんなことを自分が学ぶために、もうちょっと時間の余裕を持ちたいな。非物質社会にも投資したい。
もちろんサーフィンも楽しむよ。波やサーフィンはいつだって僕たちサーファーをワクワクさせてくれるものだからね。これは海からの贈り物なんだ。毎朝起きて波を見るのは、毎日新たなプレゼントの箱を開くようなもの。難しい波に挑戦しようとか、ある特定のボードに乗ろうとか、うまくサーフィンしようとか考えず、自分にプレッシャーをかけないで、ただ海に入り純粋にサーフィンを楽しめばいい。もっとワクワクして、そのワクワク感やインスピレーションを他の誰かと共有すれば、サーフィンや人びとや社会をさらに愛せるようになる。ポジティブなバイブをシェアすれば、人生はもっとよくなるはずだよ。

プロフィール

プロフィール

IMG_7851.jpgtomita takashi
1982年12月16日生まれ。カリフォルニアのオレンジ・カウンティ出身。カリフォルニアの映像クリエーターとして昨今注目を集める。若くしてロングボードの才能に恵まれるが、コンペティションやサーフィン界の商業的な部分には早くから冷めていた。映画制作はほぼ独学。初フィルムは20歳のとき。その処女作"Riding Waves"は、Xダンス・フィルム・フェスティバルでベストシネマトグラフィー賞に、またビッグアイラインド・サーフフィルム・フェスティバスでベストフィルム賞に選ばれる。スマトラの北端でのサーフエイドの活躍をドキュメントした“Next Wave: A Tsunami Relief Story”ではエミー賞に輝く。サーフフィルムとしては前作となる“Under the Sun”でも数々のフィルムフェスティバルでアワードを多数受賞。クリエーターとしての信条はシンプリシティー(質素さ、簡素さ)の美しさを表現すること。著名サーファーをキャスティングしただけのありがちなサーフフィルムとは違い、独自の価値観と理念に基づいた視点で描くユーモラスな社会派のドキュメンタリー作品が多く、世界的にも高い評価を得ている。数年前から、DIYやハンドメイドやシンプルライフなどの価値を紹介するウェブサイト“Korduroy TV”を主宰。サンディエゴ・カウンティのエンシニータス在住。

http://www.laidback.co.jp/movies/id000079.html
http://www.korduroy.tv/

『Stoked and Broke』トレーラー

『Stoked and Broke』トレーラー

上映スケジュール&DVD情報

上映スケジュール&DVD情報

パタゴニアストアー上映スケジュール
--------------------------
1/12(木)19:30~ 大崎 03-5487-2101 定員80名
1/13(金)19:30~ サーフ東京 03-5469-2101 定員60名
1/14(土)19:30~ 名古屋 052-950-7721 定員40名
1/20(金)19:30~ 神戸 078-334-7117 定員40名
1/21(土)19:00~ サーフ千葉 0475-40-6030 定員50名
1/28(土)19:30~ 福岡 092-738-2175 定員40名
2/3(金)19:30~ 大阪 06-6258-0366 定員40名
--------------------------
・全て事前予約制/有料開催となります。
・ご予約・お問合はパタゴニア開催ストアまでご連絡下さい。

PCBG-11140.jpgStoked & Broke DVD
2012年01月18日発売
PCBG-11140
ポニーキャニオン
標準価格 4,935円