更新日 2008年2月19日 (火) 10:24
   


 
 インターネット時代の到来で遥かにイージーになったとはいえ、今でさえパーフェクトな波をキャッチするのは難しい。いつだって波は移り気である。ホームスポットでさえ、他の事柄へ気持ちを向けた瞬間にするりと波は逃げていってしまう。それなのにテイラーたちは10ヶ国近くに及ぶロケーションでパーフェクションな撮影を実現させようと考えた。おまけに役者は現サーフィン界のメインストリームで活躍中の3人だ。その日々は、ASPツアーに加えプロモーションに追われていることなど簡単に予想がつく。波の気分と、彼ら3人のスケジュールとのマッチング。2つの要素がビジュアル面において合格ラインを越えてこない限り、今作は誕生しえない。そこをテイラーはメイクした。およそマジックと呼ぶに相応しい手腕である。

「 パーコは家族がいるし、タジはオーストラリア、アンディはカウアイ、みんな状況が異なることも考慮して段取りをする必要があったから、密接なコミュニケーションは不可欠だった」

「スケジュールの調整が一番大変だったかな。これほど多くのロケーションでシューティングするなんて不可能だと思っていたくらい。なにせオリジナルのプランは3人全員でいろいろな場所へ行こうというものだったからね。でもそいつはムリ。3人みんな忙しすぎてね。それで彼らのスケジュールにあわせロケーションをピックしていったんだ。インターネットを使い、ローカルに連絡することで世界中の波をサーチして、今どこがいい、彼らのスケジュールはどうだ、じゃあ誰にどこへ行ってもらおう、と。そんな感じだった。パーコは家族がいるし、タジはオーストラリア、アンディはカウアイ、みんな状況が異なることも考慮して段取りをする必要があったから、密接なコミュニケーションは不可欠だった。たいていは1年というスパンで1本つくるんだけれど、今回18ヶ月かかったのはそういう理由もあるね」


「1つのロケーションで費やした日数は平均10日くらい。波予報をずっと見て、待って待って待って、ゴー! みたいなノリ。フィジー、モロッコ、ムンダッカはそんな感じだった」

「クラウドブレイクとレストランツを満喫したフィジーが最高のトリップ」とパーコは言っていたが、このフィジーのように撮影だけを目的にしたトリップだけで今作が完成したわけではない。WCTで各国入りする3人のスケジュールにあわせ、イベント開催地近くのスポットでシューティングをセットアップ、撮影されたフッテージもある。

「基本的にはシューティングのためだけにスケジュールをセットしたんだけれど、コンテストの前後にスケジュールを使って撮影したフッテージもある。ムンダッカはWCTの前だし、モロッコはタジがコンテストでヨーロッパにいるというのでセットした。ヨーロッパからモロッコはそう遠くないからね。フライトもかなりの数が飛んでいることもあってすべてスムーズに運んだと思う。1つのロケーションで費やした日数は平均10日くらい。でもいつもより短いよ。波予報をずっと見て、待って待って待って、ゴー! みたいなノリ。フィジー、モロッコ、ムンダッカはそんな感じだった。だけど以前よりはるかに波をキャッチするのは簡単になったよ。ローカルと事前に話をして、波を待って、時が来たらシューティングに行く。トリップに出る前にやるべきことは終わっていると言ってもいいくらいさ」。


「メキシコ本土のシークレット。もっとも好きなシーンのひとつだね。今作最初の撮影トリップでもあった。もうマシーン・ウェイブでね、どの波も同じカタチのパーフェクトなんだ」

 ビラボン側からテイラーに「この3人でムービーを作りたい」とコンタクトしたことからスタートした『TRILOGY』プロジェクト。ロケーションの豊富さに加え、今作の根幹をなしているのが今をトキメク彼ら、3者3様のスタイルが存分に楽しめる点である。当初のプランで進めば、すべてのロケーションで3人のサーフィン・スタイルを比較しつつ見られたわけだが、そのアプローチは現実的ではなかった。とはいってもテイラーの狙いは随所に感じることができる。たとえばメキシコのフッテージだ。

「あれはメキシコ本土のシークレット。もっとも好きなシーンのひとつだね。今作最初の撮影トリップでもあった。もうマシーン・ウェイブでね、どの波も同じカタチのパーフェクトなんだ。クオリティーはキラみたいな波。人は少なく、水はクリアで温かい。そんな最高のロケーションで、パーコが最初の波をキャッチしてリップすると、次の波にアンディが乗っていくんだ。波はほとんど同じカタチなんだけど乗り手のスタイルがまったく違う。ラインもトリックはもちろん、アプローチからして違うんだよ。彼らのパーソナリティが出ているというか、同じ波でもサーフスタイルは人それぞれまったく違うんだということが改めてわかる、そのコントラストを表現できたフッテージになっていると思うよ」

 観賞後は単純に海でリップしたくなる。そんな気分にさせてくれるのは、モーメンタムやフォーカスを手掛け世界に存在を認めさせたテイラーの王道とも言える映像スタイルだ。現在最高のサーファー。最先端のサーフィン。うらやましい限りのロケーション。BGMもカサビアンやレッチリを使用して、今作もMTV的なメインストリーム風味盛りだくさんのエンターテイメントに仕上がった。「最近見たなかではシリアナやバベルが好き」というテイラーの最新アプローチは前作シッピング・ジェットストリームで味わえたが、今のサーフィン界をあらわすテーマをモチーフに、分かりやすく、かつゴージャスにエディットする手腕はさすがテイラーといったところだ。
 「いつもは3本同時につくっている。それ以外にやりたいことがないから天職なんだろうね」と笑うワークホリックな映像作家が送り出した最新作。現在のメジャーシーンをチェックしておきたいサーファーは必見の『TRILOGY』である。  
▲試写に来日したパーコとテイラー
▲試写で舞台挨拶をする二人
▲アンディ
▲アンディ
▲パーコ
▲タジ
 
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